Photo:OSAKA ---Flamboyant colors in the busy town--- By Teruhide Tomori
Facebookの言語設定で関西弁が選べるようになりましたね。そこでかっこわるいマジレスをしてみることにしました。
関西弁なんてもんおまへん
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大阪弁、関西弁と口にすると必ずウンチク屋に言われるのは「関西弁じゃなくて近畿方言でしょ。」というものです。私もそう思っています。おそらく大阪以外の西日本住民は大概そう思っているはずです。特に京都あたりは、京言葉を大阪弁や関西弁といわれた日には発狂してしまうでしょう。
Facebookが関西弁に対応、「いいね!」は「ええやん!」に - GIGAZINE
それに今回の関西弁と呼ばれる訳はちょっと納得がいかないのです。「いいね」に対応するなら「ええね」ではないでしょうか。「ええやん!」ならば「いいじゃん!」となっているべきです。
世間で思われる関西弁は吉本弁
仮に関西弁というカテゴリーが存在すると認めて話を進めますが、世間で言うところの関西弁は特に近畿地方周辺の地元言葉でも何でもなく吉本芸人が広めた「吉本言葉」である場合が多いです。
おかん、おとん、でんがな、まんがな、でんねん、すんまへん・・・諸々。最近では全国区で「おとん、おかん」と両親のことを呼んでいますね。大変嘆かわしいことです。日常とはかけ離れた言葉を誇張しておもしろおかしく遊んでいたものを、日常語で使っては大変聞くに苦しい言葉になってしまいます。浪曲風のイントネーションで普段の会話をすると、滑稽ですよね?舞台には舞台の言葉が、目上の人には目上の人の言葉が、女性には女性の言葉、子どもには子どもらしい言葉。これが日本語の魅力であると思うのですが、「平等」を履き違えたような社会の流れにのって、近頃電車の中で聴く会話には男女の差が感じられなくなっています。喜劇を生業としている方々におもしろおかしい吉本言葉の使用は譲って、情緒豊かな日本語を使用しませんか?
大阪弁の中でも下品な言葉
言葉に上品、下品とランクをつけるのはいささか抵抗がありますが、お笑い芸人や世間でおもしろおかしく使っている関西弁というものの多くはドヤ街のスラングであったり、貧しい人たちの言葉です。「われ、なにしてけつかんねん!」冷静に考えれば、このような言葉が標準関西弁なわけがないのですが、こういう下品な言葉に代表されるものが関西弁だとすっかり刷り込まれて多用する人が増えています。「われ、なにしてけつかんねん!」は決して「あなたは何をしているのですか。」とは訳せません、標準語では訳すのも難しいくらい下品な響きの言葉なのです。江戸方言で言えば「おめぇ、なにしてやがんでぇ!」に悪玉菌を100億個ぐらい追加したぐらいの悪態をついた言葉です。大阪には船場言葉というお上品な言葉もあります。それを「関西弁」と名づけて、町人言葉も役人言葉も京言葉もすべて一緒に考えると大変な誤解が生まれてしまいます。
農民言葉と貴族言葉の逆転
以前は卑しい言葉だとされていたのが、今では正式な公用語として認められるという現象はあちこちであります。日本語もそうです。平仮名なんて漢字の知識のない女性や子供の使う言葉だとされていましたが、今はどうですか?平仮名があふれて、役所でも正式に採用されていますよね。
朝鮮半島でも朝鮮語は女子どもの字だといわれて아해글(アヘグル:子供字)等と言われていましたが、今では新聞からも漢字を撤廃しすべて朝鮮語で書かれるようにまでなっています。アヘグルは今ではハングル(偉大なる文字)とまで言われて朝鮮民族の誇りとなっています。
その逆に沖縄では、首里の貴族でしか使われないような言葉をうちなーぐち(沖縄方言)として、宣伝しています。結果として北部の人、離島の人はこれがさっぱりわからないのにうちなーぐちはこれだと言わんばかりに世間に広まっているのです。にふぇーでーびる、はいさい、なんくるないさー、こういう方言は沖縄本島の一部を除き日常生活で使われることはありません。
多言語環境に見る方言の扱い
お隣の台湾は大変な多言語環境です。原住民だけでも何種類もの言語があり、それに加えて中国本土の台湾語(閩南語)、客家語を主に、様々な方言が存在しています。方言といっても、お互いに会話が成立しないほど言語の差がある方言です。共通語は北京語で一部では日本語を共通語とする部族などがあります。
喋れないけど、聞けば9割方意味はわかるという人も多く、台湾語などは頻繁に使われますが、やはりそれはローカルな言葉であるので目上の人や仕事の正式な場所では使いません。特に目上の人の前では失礼にあたるので、台湾語でべらべらと喋ることはしません。
考えてみれば、日本でも正式な場で関西弁を使うことは敬遠されていたはずです。しかし、上司が関西出身であったり、メディアで多用するので耳が慣れてしまっていたり、テレビで見たあの芸人さんの真似をしたいということで、使ってしまうことが多くなってしまいました。芸能人の中にも、数年前は標準語だったのに、何故か関西弁を喋り出したりという人が多く出現しているように思います。
親しき仲にも礼儀あり
芸人さんの使う言葉はおもしろく、親しみや愛着の湧く一般大衆の言葉ですから関西弁を使いたくなる気持ちはわかります。しかし、どこかで線を引かなければ悪友や親しい友人だけで使うような言葉を職場や家族に対して使ってしまうことになってしまいます。父親に「おとん」というのは「おやじぃ」といっているのと変わらないのですが、感覚が麻痺して「おとんが・・・、おかんが・・・」と使っていませんか?
Facebookに話は戻りますが、その「ええやん!」というのがそもそも関西弁ではなく、仮に関西弁とカテゴライズしたとしても、全世界にこれが関西弁ですよとアピールするような言葉では決してないということです。Facebookの言語設定には「海賊言葉」などもあり、そのような意味合いで使うならOKかもしれませんが、このブログが今後の「関西弁」の使用にあたって一石を投じてくれれば幸いです。
最後にもともと英語で「like!」であったものが「いいね!」と訳されている事情などを考察したおもしろい記事を紹介して終わります。