令和が中国語では「疲れた」という意味で、「日本人はおもしろい元号を付けたな」と笑われているらしい。時代が時代なら名のある人がこんな発言をすれば、「え~そうなんだ。なんでこんな元号つけたんだろう。」となるところですが、今はわざわざ膨大な資料をかき集めて歩く必要もなく、朝方コーンスープを飲みながら5分もかからず検証できるので、早速しらべてみましたよ。兵頭正俊 (@hyodo_masatoshi) さん、ネタの提供ありがとうございます。

スポンサーリンク

百度さんにきいてみよう!

from:额累哇什么意思_百度知道

兵頭氏のいう「疲れた」にあたる意味の元ネタは「累哇」のことだと思います。普通は「累了」と使うものなので「累哇」を見たことがないわたしは、中国版Yahooにあたる、百度先生に聞いてみることにしました。

中国人も「累哇」の意味がわからないので、Yahoo!知恵袋のような機能を使って聞いている人が多数。おかげで元ネタがわかりました。簡潔に言うと

日本語の「オレは、」に中国語で読み仮名を振ったもの。

以上。実にシンプルです。中国人が日本語を発音しやすくするように、漢字を使って似たような音を当てはめただけというオチ。その結果「累哇(lei4wa1←ピンインと声調)」という「疲れた~!」という意味にとれなくもない言語が生まれています。

日本語で例えるならば、以下のようなパターンが近いです。

  • America→亜米利加→アメリカ と漢字やカタカナをあてるパターン
  • 北京→ペキン 「ホクキョウ」とせずに「ペキン」という北京語に近い発音をあてたパターン

こういう事実に揚げ足を取って、「北京」は日本語では「物が折れる擬音に似ていて笑われている。ひどい都市名をつけたもんだ。なぜ共産党の幹部は指摘しなかったのか。」と言っているようなものです。

むしろ日本に好意をもっている人の発言

仮に「令和」を「累哇」と同一視するような中国人が本当にいるとしたら、それは何かしらの原因で日本や日本語自体に興味があって、言語へのおもしろさであるとか、日本文化に対する愛着のようなものを持っている人が多数でしょう。

「累哇」を一躍有名にしたのは漫画ワンピースです。「海賊王に おれはなる!!!!」というフレーズはこれまで、「わたしは~です。」としか教科書でみたことのない中国人たちは不思議に思うものですが、いまではネットスラングとして「一人称 オレ」につく「助詞 は」そして、発音はhaではなく中国語の哇と同じwaで発音するということまで理解しているんですよ。

日本人でも「は」と「が」の使い分けだとか、品詞についてちゃんと説明できる人は少ないのではないでしょうか。僕もできません。それを、「中国人は日本の元号を馬鹿にして笑っている」として、敢えて中国と日本を遠ざけるような発言は大変悲しいものです。

時代を超えた言語の交流

「垂乳根之 母我養蚕乃 眉隠 馬声蜂音石花蜘蛛荒鹿 異母二不相而」

はてさて、こんなに漢字が並んでいったいどんな意味でしょう?漢字はその形からパッと意味が連想できる便利なものですが、音として表すには少し不都合なもの。上の文字を一つずつ音読みして読み仮名をふっていくと、意味が見えてきます。

「たらちねの 母が飼う蚕(こ)の 繭隠(まよごも)り いぶせくもあるか 妹に逢はずして」

こうすれば、何となく意味がわかりますよね。「母が」を「母我」と漢字をあてて読んだり、「いぶせくも」の「くも」は漢字の意味「蜘蛛」とは違う意味だとわかります。日本も片仮名や平仮名が普及する以前は漢字しかなかったり、平仮名や片仮名は女性や子供が使う文字で男性や識者は漢字を使うのがクール(よりフォーマル)等の要因で、大和言葉を表す手段として漢字をあてていました。今回話題になった中国の「オレは」→「累哇」と同じ変換作業を行っていたんです。

漢字辞書を調べたさいに「漢音」とか「呉音」という字をみたことがあるかもしれません。現代中国の共通語が北京語なので今回の「令和」には北京語発音の「累哇」があてられています。日本では、古事記に呉の時代の発音「呉音」で書かれた漢字がずらりと並びます。日本書紀には漢の時代「漢音」で書かれた漢字がびっしりです。

こうした時代が流れ流れて今の50音も完成しています。50音を作る際に、中国では伊はこんな意味、呂は不吉、波はおっぱいの意味と全てを考慮にいれて作成していたらいつまでたっても完成しなかったでしょう。ましてや、他国のネットスラングの意味まで考えて作りましょうなんていうのは、建設的ではありません。

言語は生き物である。

とはよくいったもので、言語を知れば時代の背景すらみえてくることがあります。ハインリヒ・シュリーマンが多言語をあやつり伝説の都市トロイアを発見したように、実は全くつながりのないような言葉が裏では密接な関係をもっていたりします。英語の比較級にmore型、er型があるのは何故か考えるだけで歴史のロマンにひたることができます。

中国一国をみても、元や清が台頭したというだけで、モンゴル語や満州語の影響が深く残っているのは小学生でもわかることでしょう。古くから朝貢貿易で漢字での筆談が行われていたことからも漢字が世界へ与えた影響は絶大です。

ですが、ただそれだけの話。漢字はそれぞれの国に渡って独自に発展しています。また中国では現代風に意味が変わっても、日本では中国古来の意味を保存した言葉などもあります。一つの漢字を世界各国に波及した漢字の意味をあてて揶揄するのは文化人として恥ずべき行為ではないでしょうか。まして、自国の代表が令和に込めた意味をすでに説明しているのですから。他国の意味がどうであろうと、もののネタ程度に笑って見守る寛容さが欠けています。

 

 

 

スポンサーリンク

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事